第一章

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この店のことについては知れたしそれだけで十分だ。そもそも最初はそこまでこの人に踏み込む気すらなかった。怖かったし。高校卒業したら、すぐ辞めるつもりでいたから。 「いや、隠すのも変な話だから言う」 幸人さんは私の目を見る。 「メールアドレスは、あいつの話でもさっき前任者の桜庭さんの話が出ただろう?」 「桜庭さん?」 記憶をたどる。 「あ、はい。出てましたね」 「その人が教えたんだ。あいつに」 「え?」 「余計なことをしてと思わないでもなかったんだが、どんどん送られてくるからあきらめがついてな。そのままだ」 「そうだったんですね。でも、俊さんからメールが届いたらやっぱり、名前が書いてあるんですか?」 「当たり前だろう?」 「ということは幸人さん、俊さんのメールアドレスちゃんとアドレス帳に登録しているんですね」 「そうだな。だってあいつから逃げる時、名前が表示してあったほうが瞬時に逃げられるだろう」 「なるほど」
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