第一章

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幸人さんがどこか焦ったように携帯を出すように言ってくる。バイトでの連絡先はここの固定電話だし。なんで私の携帯がほしいのだろう?とりあえず、ここまで焦っている幸人さんは見たことがないので私はポケットから携帯を出した。 「何がしたいんですか?」 「急いで、早急にこの電話番号を入れろ」 「はい?」 「いいから。説明してる暇はない。早くしろ」 幸人さんが自分の携帯の電話番号が書いてある画面を私にぐいぐい見せてくる。私は幸人さんの焦りにあてられて、言われるがままに焦りながら電話番号を登録した。 「できました」 「よし、じゃあ何かあったらすぐに電話しろ。駆けつけるから」 幸人さんは私の両肩に手を置き、今まで私には一切向けたことがない笑顔で笑った後、焦るように大股で奥へと消えていった。 「え?ちょっ、ちょっと幸人さん!!」 慌てて立ち上がり、奥に呼びかけるも返事はしない。それどころか気配すらしない。えぇ~、どうしよう?とりあえず、すごすごと戻る。そして席に着いた。幸人さん、いったい何があったんだろう?急用というよりは何かに追われているような感じだったけど。携帯を見て、一瞬電話を掛けようかと考える。でも、今何かあるわけじゃないからな。まぁいいか。私はもう一度万年筆を手に取り、原稿に文字を書き始めた。
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