第一章

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「前にも一度ここにお越しいただいたことが?」 「そうなんだ」 男性は笑顔のままだ。前一度来たということはこの店のシステム的にもしかしたらこの男性も悩みや後悔を吐露したのかもしれない。 「ところで、君はいつから働いてるの?」 「私ですか?私は一年前から働いてます」 「だからか。道理で君のこと知らないと思った。君はどんな方法使って雇ってもらったの?」 私は目の前の男性に少しの違和感を覚えた。なんだか言葉にとげがあるような。でも、目の前の男性の表情はそんなこと感じさせないほど柔らかだ。気のせいかな。私はポケットに入っている携帯をぎゅっと布地の上から握りしめた。 「いたって普通の方法ですよ」 「へぇ、普通の方法ねぇ。そっかそっか」 男性は一瞬目をすがめたかと思うと、一瞬で元の柔和な表情に戻る。 「具体的には?」 「具体的にですか?具体的に言うと、オーナーにアルバイトをやらないかとお誘いいただいたんです」 「オーナーか。そういえば、ここのオーナー見たことないな。どんな人?」 「不思議な人ですね。天真爛漫で、いたずら好きなところがあったり、考えが読めないところがあったり」     
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