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最上階にあるバーは上品な雰囲気だった。山奥なので夜景は期待していなかったが、内庭の立派な情景が確認できる。美しい日本庭園だ。暗い中にある灯が幻想的な雰囲気を醸し出していた。
蝶ネクタイをしたフロア係の女性に案内され窓側の席に座り、感嘆の息を漏らしつつ、何を飲もうか悩む。
最終的にカミカゼを注文した。名前が何となく好きでよく頼むのだ。小腹を満たすものも欲しい。酒がきたら再度注文しよう。
「あら、アオさん?」
聞き覚えのある声がした。上半身だけ向けると、夕食を共にしたみかんがいた。
「どうも」
「隣いいかしら?」
「ええ」
ここで断るのも変だと思い笑顔で了承した。特にすることもないし、話し相手ができることは素直にうれしい。しかも美人であれば尚更。
「夕食が早かったせいで小腹がすいちゃって。あと私お酒好きで呑みたくなっちゃったの」
みかんは私の隣に腰を下ろし、白ワインを注文した。
「私も同じようなものですよ。部屋に帰ってもすることがなくて暇で暇で」
「ね。テレビも退屈だし携帯も取り上げられたから何もできないわ」
考えることは皆同じようだ。
「カミカゼと白ワインです」
酒が運ばれてきた。グラスを傾けて乾杯をする。
「あ、すいません。あと何か食べる物がほしいんですが、メニューありますか」
みかんが問いかけた。
「お好みでお作りしますが、ご希望はございますか」
「うーん・・・おにぎりとか」
「私は和的な物とか」
みかんがおにぎりと口にしたので、私もついバーに相応しくない食べ物を言ってしまった。しかし意外にも「承知いたしました。少々お時間いただきます」という返事が返ってくる。
「何が出てくるのか楽しみ。夕食もおいしかったし」
「本当に至れり尽くせりですね」
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