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「でもこんな簡単な問題で賞金十万円なんてびっくり。何かテレビのドッキリ企画なんじゃないかしら」
「私もそう思います。実は私も貴女と同じで、会社の上司に頼まれて参加してて…てっきり参加者が少ないんだと思ってたんです。でも、いざ来てみると参加者も多いし、わざわざ参加者を増やした意味がわからない」
「おかしいわよね。それに、あの宝探しの話は何なのかしら」
「ああ…」
夫人の言葉が頭を過る。
数十億。
「夢物語、ですね」
私は信じていない。数十億なんて、一般人には一生縁がない金額だ。宝くじに当たるのとは訳が違う。見ず知らずの人間に数十億を手にする機会を与えるなんて、いくら資産家とはいえあり得ないだろう。
苦笑いを浮かべながら酒を飲み干した。
「私も半信半疑よ。でも、中には必死で探している参加者もいるみたい。ホテル中を歩き回ってる人、結構見たもの」
確かにバーの客も少なく感じる。私としては一つの事件を解き終われば参加した風な感じになるし、後の六日間はのんびり過ごしたいものだ。もちろん件の宝探しが本当なら話が変わってくるかもしれないが。
「お待たせしました」
先程とは違う蝶ネクタイの女性が食事を運んできた。上品な場に似つかわしくない濃いにおいが充満した。他の客の席が遠くて良かった。
「焼きおにぎりと味噌焼きです」
これは食欲をそそる。味噌焼きはホタテ貝の貝殻を皿にして、中にネギやホタテが味噌で煮込まれており、卵でとじてある。まだぐつぐつと動いていて旨そうだ。これには日本酒だろうか。しかしこんな素敵なバーで…。
「すいません、スコッチのソーダ割りを」
悩んだ末、料理に合いそうな炭酸系を注文した。
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