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「ホームズさんのおかげで十万ゲットー」
えへへ、と笑っているうさぎは可愛い。確かに可愛いが、いくら何でも駄目だろう。
私はイラつきながらサンドイッチを平らげる。ハムの塩気とチーズのこってり感が抜群だ。付け合わせのサラダにはりんごの薄切りが入っている。意外な組み合わせだがありだ。
「このお菓子おいしいー」
うさぎは髪の毛の巻いている部分を指で触りながら、私も貰った最中を頬張っている。
「あ、これバナナ最中だ。なつかしい」
ホームズが言う。
「バナナ最中? あー確かにバナナの匂いがする。でも中身白あん?」
「そう。俺の故郷の名物さ。実際にバナナは入ってないんだけど、バナナのエッセンスを使ってるんだ。元々バナナが高級品だった時、庶民でもバナナを楽しめるようにって作られたらしいよ」
「へー。ホームズさんて物知りですねっ」
へー、そうなのか。
ホームズのウンチクを聞きながら最中に手を伸ばす。確かに、言われると形もバナナのようだ。このバナナ最中、大変おいしくいただいた。ブラックコーヒーとも意外と合う。
食事は満足だが、この二人と同じ空間にいることを苦痛に感じている。
私は二口で最中を片付け、喫茶店を後にした。
行く所を模索し、とりあえず二階に行ってみる。エレベーターを降りると、数名の参加者がブナの間の付近を徘徊していた。
二階の廊下の展示品を眺めながら、ゆっくりと歩くことにした。美術品に触れる機会など高校生の社会科見学以来だ。良さはまったくわからない。
展示品は様々だった。一階のロビーにある物とは違う。中は赤い漆器だが、外側は千代紙を散りばめたようになっている。何重にも漆を塗り重ねているのだろうか。だからといってごちゃごちゃした感じはなく、艶やかながら上品だ。やはり値の張る物なのだろうか。
品々の後ろの壁には写真が貼られている。白黒の写真で、祭りの情景や広大な自然の風景だ。
「あれ?」
ふと、祭りと思われる写真の、鬼のような、歌舞伎のようなモチーフに目を奪われる。
「これは…」
見たことがあるような気がする。
私はしばし立ち止まり、記憶を探る。
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