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「お客様、申し訳ございません。お客様のお名前を類推できるニックネームはご遠慮ください」
右隣のフロント係が私の隣の客にそう注意した。客は「ああ、はい」と新しい用紙をもらい再度サインペンを走らせている。
なるほど、つまり私も書き直す必要がある訳だ、と隣の客を見ていると、私の方のフロント係は「こちらでよろしいですか?」と言いながらネームプレートになるであろう用紙をひょいと手に取った。
「え」
「はい?」
「いえ、それでお願いします」
フロント係によって基準が違うというのもどうかと思ったが面倒なのでそのまま了承した。彼女はささっと用紙を透明なケースに入れネームプレートへと変化させる。
「自室では取って構いませんが、部屋を出る際は必ず見える位置にお付けください。鞄に付けることは禁止です」
「はい」
「財布や身分証明書等の貴重品、携帯電話やパソコン等の電子機器類、その他外部と接触できる品に関してましては全てこちらでお預かりします。返却は一週間後、お客様がご退室される時です」
「はい」
財布と携帯電話をジーンズのポケットから出し渡した。よくよく考えると、携帯電話がない生活なんて学生以来だ。良いリフレッシュになるかもしれない。
彼女は私の財布と携帯電話を丁重に、透明なビニール袋に入れる。
「今回ご署名いただいた用紙はあちらの黒色の金庫に、お預かりした貴重品は逆側の茶色の金庫に保管します」
フロントの壁際を差しながら説明され、とりあえず頷いた。重厚そうな金庫だ。
「最後に、先程ご確認いただきました注意事項を再度読み上げます。
『 以下の事項を禁止する。
・外部(ゲーム関係者以外)と連絡を取る
・電子機器等外部(ゲーム関係者以外)と接触できるものの所持
・他参加者に対して自身の名前、職業等のプライベートな情報の開示
・参加者、係員等関係者に対しての暴力
・係員の指示に従わない
その他ゲーム参加不可と運営が判断した場合は強制的にご退場いただきます。
注意喚起で留めるかご退場になるかは運営側の判断となります。何卒ご了承ください』
ここまででご質問はございますか」
「大丈夫です」
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