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黄土色の乾いた砂と、廃屋。場所によって風は湿っていたり、乾いていたり。
上を見れば大きな電球が沢山ぶら下がっており、暗闇を淡く、けれど確実に照らしている。それが無ければ、きっとこの世界は真っ暗闇で何も見えなかっただろう。
けれどブラックである我らにとっては、その灯りがあっても無くてもあまり変わらないけれど。
ゲームが始まるのはいつも唐突だ。
街を歩いているとき。買い物をしているとき。シャワーを浴びているとき。
それは時も場所も関係なく、誰か一人でも“その気”になればそれは始まるのだ。
ブラックはいつだって血に飢えている。
崩れた壁に寄りかかり、口の中に入った砂利を舌の上で転がした。
ザラリとした感触は好きではないが、この昂揚感がそれを感じさせなくさせる。
少しでも気を抜いたら終わりだ。それは相手も同じ。そして同じように高揚しているだろう。
その人数は正確には分からないが、何人だっていい。相手が多ければ多いだけ愉しみが増えるというものだから。
赤い瞳を閉じて回りの気配を探る。
ホワイトとブラックで優劣があるように、ブラックの中でも優劣がある。
相手が弱ければ隠しきれない気配を感知することが出来るし、強ければ我が見つかってしまう。
今我が見つけられるのは三人、もしかしたら見つけられていないブラックも混ざっている可能性があるが、その時はその時でいいだろう。そこまで頭を使ってするゲームではない。ブラック同士で行うゲームは。
舌で転がしていた砂利を吐き出すのではなく飲み込み、我の得物を握りなおす。
気配が1つ動いた。きっとそれを察したものはそれに便乗して動き出すだろう。それに我も、と一歩踏み出すために足に力を込めれば。
「なぁにしてんの」
喉にヒヤリとしたものが当てられた。
それは背後からではなく、下から。声も下からだ。
顔を少しでも動かせば刺さってしまうそれに視線だけを動かせば、足元にしゃがみ、サバイバルナイフを逆手に持った手をこちらに伸ばして首に当てている相手がいつの間にかそこにいた。
気配なんて、音なんて一つも感じられなかったというのに。
(まさか・・・)
黒いスーツに黒い手袋。その動きずらそうな姿は彼らのトレードマーク。
淡い暗闇に輝く瞳は、そこらにいるブラックよりも冷たい輝きを放っていた。
「随分と楽しそうにしてるんじゃない?」
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