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「え?」 私は画面を思わず凝視した。こんな動画、撮っていただろうか。いやいや、動画はあれだけしか撮っていないはずだし、それに画面はそのままにしていたはずで別のものに切り替えていないはずだ。これは一体、どういうこと。 『ったく。毎日泣いてる顔見せられたら、俺も安心して成仏できないじゃないか』 混乱している私を置いてけぼりに、画面の中の拓真はそんなことを言う。腰に手を当てて眉を寄せて慣れない怒り顔を見せている。優しい拓真。怒るのは苦手だと言っていた。 「拓真……?」 これは夢だろうか、とグニっとほっぺをつまむ。しっかり感触はあり、弱々しい指先でつまんだそれは痛くはないが変に伸びる。するとスマホの中の拓真がプッと小さく笑った。 『ベタな確認方法』 私が大好きな彼の笑顔だった。 「拓真……本当に拓真、そこにいるの?」 思わず前のめりになって小さな画面をのぞき込む。その画面に吸い込まれればいい、と思うほどに近づく私の眼前で拓真は慌てるように早口で喋り始める。 『いるよ。聞いて美帆。俺はこの動画の間でだけお前と話ができるみたいなんだ。そっちの声ももちろん聞こえる。俺の声もちゃんと、届いているよな?』 私はコクコクと頷いた。信じられない話だったけれど、信じたい話だった。 拓真はそんな私を見てホッとしたようにまた笑う。そして言葉を続ける。 『美帆。俺、お前とまた会いたくてここにいるんだと思う。話したいこといっぱいあった。あんな最期で本当にごめんな』 「そんなこと──そんなことないよ!」 だって拓真だってもっと、生きたかったはずだ。突然奪われたあまりにも若すぎた彼の人生。一番悔しいのは誰でもない拓真なのに。 その間にも画面下のタイムバーがどんどんと残り時間を削っていく。右へとバーが移動し、それを彼も見ているみたいに視線を下に落とした。残りがもう十秒を切っている。拓真は言った。 『美帆、またな』 そこで拓真のアップは止まり、画面はまた冒頭のシーンの静止画に戻った。私は慌てて再生ボタンをタップしたが、画面の中の彼はいつもと同じ行動を繰り返すだけだった。最初の五秒、君は気づかない。もう私を『美帆のバカ!』と怒る彼にはならなかったのだ。
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