第1章

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 ハイヒールの音だけが響く夜の道。街灯も人通りも少なく、普段だったら恐怖を覚えるところだが、今の私はそれどころではなかった。私は、香織にラインを入れる。  ――あのM大の男、ヤバいって!  ――M大?そんな人、いたっけ?  ――中曽根敦とかいう奴!タゲられたから先に帰るわ!  また、スマホが鳴る。そのメッセージを見て、私は足を止めた。  ――M大の中曽根敦って、この間ニュースになってなかった?アパートで服薬自殺してたのが見つかったって。  ドクンと心臓が波打つ。脳裏に蘇る、あいつの声。 『まだ、女ではやったことないんだよね』 嘘だ。じゃあ、あの人は……。  こめかみに汗が伝う。手足の先が冷えていく。その時、背後で誰かの足音がした。
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