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ある日、男子がそれに野球ボールをぶつけた。故意ではなく、柱の角で跳ねたものがぶつかったのだ。かすった程度ではあったが、粘土の足は押されたままにぐにゃりと変形した。
誰かの作品だったら問題になったかもしれないが、壊されたことで泣く生徒はいなかったので「教室内でボールなどを使った遊びはやめるように」という話が先生からあっただけでそのときは終わった。
その男子がグラウンドで野球の練習中に足を怪我したのはその数時間後で、りなさんはぼんやりと人形のことを思い出したという。しかし、それだけだった。
だが、それは続いた。偶然近くで躓いた女子が手をついた先に粘土があり、人形の手の部分が不自然な方向に曲がった。
それからすぐ「突然ピアノの蓋が倒れてきて」、折れた彼女の指はおかしな方向に曲がっていた。
粘土の人形に悪いことをすると同じ部分に怪我をする。
言葉にすればそうなのだが、同じように展示されている他の宿題は一切壊れたりしていない。粘土の人形に触れて怪我をした子たちも悪気があってやったわけではない。躓いた子も、何もない所でどうして躓いたのかわからないという。
まるで、怪我をさせるために粘土の人形自体が生徒を呼び寄せているかのようだった。生徒も徐々に好奇よりも気味の悪さが勝って遠巻きになり、更に四件の事件が続く頃には、それはクラスで『呪いの人形』になった。
担任の先生はそれを捨てると言って持って帰った。確かに捨てたのだろう、とりなさんは思っている。おそらくは、バラバラにして。
先生は数日後ゴミ捨て場でバラバラになって見つかった。
あれが誰の持ち込んだものだったかは、わからないままだ。
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