ビターな想い出

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「聞こえちゃうから……声我慢して?」 襖を隔てた隣の部屋から男の声がした。 「で……もっ……うぅんっ」 ピンク色の声を出す友達のユキの顔がぼんやりと瞼に浮かんだ。 マナー違反だよなぁとイラつくけど、ユキとの関係を悪くはしたくないし、と バッグからイヤホンを取り出してスマホにセットして、気が紛れそうな動画を再生した。 築20年、2DKの部屋は2つとも和室の安いアパート。 部屋を分けるモノが襖でも、大学で初めて出来た友達のユキとなら気にならないと思ったし、だからこそルームシェアをしようと持ちかけたんだけど。 「あっ……あっ……」 イヤホンをしていても聞こえてくる音量とその声色で終わりが近いなと分かるくらい、最近よく彼氏を連れてきているユキにちょっと辟易しているなんて言いにくいったらない。
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