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それぞれ単独の仕事も同時並行だったから余計だった。
二人組みをライバルとして捉えるなら、ハナはかなり手ごわかった。正直、比べられるのは嫌だったし、支持やファンの数も気になった。ヒロは人一倍負けず嫌いでもある。
でもハナは負けるも勝つも関係なさそうだった。
新しい仕事がきても、いつもどこか醒めていて、舞い上がるような高評価をもらっても他人事のようで、はっきりいえば、本心はさほど嬉しくもないようだった。
せやかて、僕の何がおもろいんかよくわからへんもん。
さらっと言ってぼんやりしてる。ただハナは全てにおいて醒めてるわけじゃない。おそらく求めているものと、与えられるものとが別なのだ。
でも、その渇望はさらにわかりにくかった。二人はなんとなく上昇気流のり、実力以上の幸運に恵まれている。あちこちからラッキーだと羨まれた。だから余計にハナはもどかしく、そして言い出しづらかったのだろう。
ともかくそのギャップはハナを除々に蝕んでいった。
ヒロが気付いたのは、情けないことに、スタッフに言われてからだった。忙しさや幼さを理由にしても、相方として自分が一番先に気付くべきだったと思う。おそらくハナは誰よりもヒロにわかって欲しかったと思うから。
最近、ハナ、笑わないよね。
話しても返事はするんだけど、何だか人の話を聞いてないような……
ヒロはそこに到っても、そう深刻な事態ではないと思っていた。
「なんや、ハナ、疲れてるんか?」
くだらないことはいくらでも言えるのに、ちゃんと声をかけることは気後れしてできない。
気にはしながらもためらっているうちに、ハナはいよいよしゃべらなくなってきた。
幸か不幸か、収録や打ち合わせの時には、いつものハナだった。いつもの、というか、スタッフが求める自分の姿を完全に演じられた。
だからヒロはまだ大丈夫だと思ってしまったのだ。
それはただ疲れているせいで、忙しいから騒ぐ余裕がないだけなんだ、と。
だが、状況は確かに煮詰りつつあった。
ヒロは無意識に「今日のハナの機嫌はどうだろう」と思うようになっていた。
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