いつでもとなり

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 オイリーが連れていく場所は高級焼き肉店、A5ランクの牛肉、蕩ける豚肉、旨味の鶏肉とどれも涎が垂れるような逸品が揃っている。  炭火でこんがり焼いたお肉を特製の甘辛ダレにくぐらせ、アツアツのご飯で頬張れば昇天しかねない美味しさだ。実際、かつてヒロはその美味しさのあまり、口の中に肉を入れたまま涙ぐんだ事がある。 「遠慮はいらん。いくらでも食ってええで」  オイリーは見かけ通り超太っ腹であった。  おニューの着ぐるみに、最高の肉。  ヒロとハナの脳内で何らかの喜ばしきフェロモンが大量に分泌された。嬉しいことが複数で押し寄せた時、人はちょっとテンションがおかしくなる。 「ぐるぐるぐるぐるっぽー」「ぐるっぽー」  手羽を躰のまえで回転させながら歌う二人。「ぽー」「ぽっぽー」と言いながらハトチャンネルのテーマ曲を歌い踊る。  確か彼らはすでに二十代も半ばになろうとしていたはずだが、やってることは三歳児。  しかし無理もない。高級焼き肉は時に人を夢のような高揚に誘うのである。 「よしよし。こんなに喜んでなあ。はよ行こ」  オイリーはさくさくと支度を始めた。巨漢を敏捷に動かしめるのは、いつだって食欲と言う名の煩悩であった。  その傍らで、佐崎の目が踊るハナヒロに釘づけになっている。  (この動き……番組で使ってみたらどうだろう)  きらり。  またしても敏腕マネージャーの勘が閃いた瞬間だった。
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