いつでもとなり

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 ハナとヒロは全くもって不仲ではない。  ヒロはハナを俺の天使と思っており、ハナはヒロを世界一カッコいいスパダリだと信じている。  コンビの仕事もピンでの仕事もともに順調、ヒロがハナの家に入り浸っているのでほぼ同棲状態、マネージャーの佐崎も二人の関係に理解があり、ラブへの障害は一切ないはずだった。  なのに、最後の一線を超えない。 (過去のアクシデントはノーカンと捉える)  なぜならば、そのたびに邪魔が入るからである。  いざその手の場面になると、まるで天変地異の前触れのごとく、外の気配がざわつきだすのだ。その不穏な空気に繊細なハナが怯え、中断して様子を伺う。  すると百発百中、気のせいでは済まされない大量のハトがバサバサと羽ばたいている。  カーテンを閉めていてもシルエットで存在を知らしめるハト。  耳を澄ませばぐるっぽー。まるで祭りの前のような只ならぬ興奮がハトから伝わってくるのだ。 「怖……またやヒロ、大きな地震の前触れかもしれへん」 「大丈夫や、ハトはナマズやない」 「せやかて落ち着かん」 こういった行為は気勢をそぐと終わりである。 しかしいつまでもここぞの時を地震対策に費やしていてはらちが明かない。  ある夜、ヒロは思い切って一気に事をすすめようとした。そのいざゆかんとした瞬間、窓のすきまからハトが突入。目から星がでるような頭突きをくらったヒロは、その羽音を聞くだけで萎えるという、手酷いトラウマを抱えてしまったのだ。 「ハナ知っとる? ずーっと清らかなままでいくと妖精になれるらしいで……」 このところ、すっかり弱気になったヒロは、虚ろに呟くばかりである。
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