いつでもとなり

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 振り返ると後方から近づいてきた派手な外車がすかさず停止し、窓が開く。 「ちょうど良かった、今からお前のところに行こうとしていたんだ」 「宮本センセ」  ハンドルを握った喜色満面の巨匠を認識すると、ヒロは思わず後ずさった。これまでの経験則から宮本イコール災難と体が察知するのであろう。そんな警戒心丸出しのヒロの気も知らず、宮本はいつになくハイテンションである。 「残念ながらしばらく会えなくなる。出国前に挨拶をしておこうと思ってな」 予想外の別れの言葉に、ヒロは青ざめた。もちろん別れがつらいわけではない。 「日本に居られなくなるなんて、何をしでかしたんです。俺、どんなに自分勝手でも先生は悪事はせえへん人やと信じていたのに!」 「逃亡じゃない、バカンスだ」 「ほんまですか! おおきに!!」 ヒロは心からの笑顔になった。大事な恋愛イベントを前にこれほどの朗報はない。宮本の顔にあれ?という疑念が浮かんだが、おかまいなしにヒロは聞いた。 「どこ行きますのん? 北極とか南極とか……」 なるべく巨匠から距離を保ちたいヒロの願望がにじみ出る。 「真冬にそんな寒々しいところに行くか。ワ・イ・ハ。わかるかね?」 「わいは」 産まれたてのヒヨドリのようにたどたどしく反芻したヒロに巨匠は高らかに笑った。 「はーっはっは。ハワイだよ! この俺の芸術魂を喚起するのは、南国の力強いエネルギーが必要なんだ。芸能人なら正月はワイハ!」 「そんな……ハワイに迷惑やないですか!」
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