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ヒロは真顔で切り返した。
それにセンセは別に芸能人やないし、と心の中で付け加える。自分の身に平和が訪れるのはありがたいが、異国の人々に迷惑をかけるのも申し訳ない。
しかし調子にのった巨匠は高ぴしゃに続けた。
「お前をチンケな都会の雑踏に置いていくのは忍びないが、俺のハニーが年末年始ぐらいは一緒に過ごしたいと言うんだ。諦めてくれ」
宮本はふふん、と笑みをこぼした。モテる男はつらいとでも言いたげな笑顔である。巨匠は常に自信だけは無駄に漲っている。
「何を」
ヒロは今度こそ真面目に問い返した。宮本は大いに憤慨する。
「何って……年をまたぐこのメモリアルな時期に俺がいなくて寂しいだろう。ったく、この馬鹿モンが! いちいち恥ずかしい事を言わすな!」
「げへっ」
虚をつかれ、ヒロは踏まれたカエルのような悲鳴を上げた。宮本と己の認識があまりにも違い過ぎて言葉にならない。照れた宮本はさらなる暴露をした。
「俺はお前の写真集に着手してからというもの、週に一回以上は必ずお前を隠し撮りすることをノルマに頑張ってきた」
「週一? ノルマ?!」
「男は日々成長する。決して撮り逃しはできん。時間さえ許せば一日一ヒロ。お前は俺の神出鬼没ぶりを偶然と思っていたかもしれんが、俺は佐崎と直に連絡をとり確実に狙いに行っていた。この俺様がこれほど熱心に被写体を追いかけるなんて他にないことだぞ!」
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