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「待って、なんでそんな綺麗で上品な人が先生なんかと付き合おうてるのん!?」
最もな疑問である。釣り合いからして奇跡の事態、詐欺の可能性を捨てきれない。いくら宮本マジックがあるにせよ恋は盲目が過ぎる。
「そう、たけみんと釣り合うのは生まれながらの紳士しかいない」
「紳士? どこに?!」
「いるだろうが、ここに! キングオブジェントルが!」
自称ダンディなウーパールーパーは親指で自らを指し示した。頭上のぽよ毛がまるで応援するかのことく風になびいている。
ヒロは絶句した。
アカン、このオッサンには何を言うても無駄や……
ヒロは相互理解の夢を捨て、宮本の肩を掴んで車に押し戻した。これ以上、デレたおっさんの自慢話など聞いているヒマはない。
ヒロはいきなり上空を指さした。
「ヤバいでセンセ、飛行機の気配を感じる!」
「何ッ?」
「ハトが言うてる。飛行機、エンジンかかったようや。もう行かんと間に合わへん、早う!」
「わかったさらばだヒロ! メリクリ!!」
いつもは宮本に押し切られてばかりだが、今日のヒロは一味違う。
今夜の目標を思えば、男として力強くリードをとらねばならない。問答無用で急かされて、ダンディ宮本は名残惜しそうにその場を去った。
「ふう……何やろう、今日は油断できひん予感がする……」
ぞくりと悪寒が走る。出だしに宮本の洗礼を受けるなど悪い暗示ではないのか。しかし、ヒロは気のせい気のせいと呪文のように唱え、一路デパートへと向かった。
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