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初めてのキスから、好きの自覚に至った日、さまざまなトラブルや邪魔に合いながらのトライ&トライ。
しかし、今日こそヒロが正しく主導権を握り、この強固な禁断の扉を開けて、ハナと一つになるのである。
「せや、まだ余裕もあるし成功祈願してこうか……」
確か、以前ハナに聞いた恋愛に御利益のある麒麟神社がこの辺りである。
旅番組『うきうきぽてぽて散歩』に何度か出演したおかげで土地勘はある。一つ前の駅になるが、お参りしてそこから歩いても目的の本店までさほどの距離でもない。
気の利いた思い付きに気を良くして、ヒロはさっそく最寄り駅で降りた。これからを思うと、ウキウキして体が羽根のように軽い。
勢いにまかせて速足だったせいで、目的の麒麟神社まではあっという間である。
クリスマスに参拝する人はさすがに少なく、境内は閑散としている。さっそく祈りを捧げようと社殿に近づくと、先客が一人、異彩を放つ派手な女性が一心不乱に祈りを捧げていた。
(あれは頑張り過ぎてイタイやつ……)
まじまじと見入ってしまう。
それは残念極まりないコーディネートだった。シルクを重ねた真っ赤な薔薇のようなドレス、胸元にクリスマスリースを模した存在感のあるコサージュ、ヒョウ柄の毛皮のロングコート、ギラついた輝きのゴールドのイヤリングとネックレス。どれもゴージャスだが、豪華さをてんこ盛りにした結果、只事ではない成金仕様に仕上がっている。
さらに髪型にも気合が込められており、よほど巻いたのか、結った髪が頭上でもっさり膨らんで巨大なアンモナイトと化している。
しかし、祈る姿は真剣だった。
手を合わせ、その指先に額をくっつけるようにしてブツブツと祈りを捧げている。
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