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白々しくも今この状況に気付きましたとばかりに言ってみる。そのまま様子をうかがっていると、沙奈が不思議そうに問い返した。
「パーティー…とか、行かれるんじゃないんですか」
沙奈の疑問は最もである。そうでなければマリアのこの派手すぎるコーディネートに説明がつかない。
「あ、これ? えーと、そうね、まあ始めはそう言う予定ではあったんだけど」
話ながら適当に修正する。
この気張ったドレス、あなたとのクリスマスの為に選びましたー!と、正直に言ったらドン引きしかねない。かと言って純朴なお嬢さんに遊び人と思われるのは困る。
「パーティは結局、仕事ね。芸能人だからって決してチャラチャラした生活を送ってる訳じゃないわ。会食がてらの打ち合わせだったりするし、実際の私生活なんて地味なものよ。沙奈ちゃ…大内さんこそ予定あるの?」
いつも心の中で『沙奈ちゃん』と愛をこめて名前呼びしているのでついポロッと出てしまう。
「……」
沙奈は爪を磨きながら首を横に振った。それだけではあまりに足らないと思ったのか、短く答える。
「仕事です」
「そうそう、そうよね。今現在働いてるもんね! ちなみに何時まで仕事? 遅いの?」
実の処、お持ち帰りを念頭に入れて予約をしたマリアは、沙奈ちゃんがこの日、早番シフトで入って、そろそろ上がりだということを承知の上だ。案の定、沙奈は遠慮がちに言った。
「いえ、今日は藍野さまで最後です」
「じゃ仕事の後、予定は?」
ごくり。勝負はここからである。
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