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さてその頃。
ハナは呆然としていた。
手芸店で目玉パーツを見つけて飛ぶようにして帰った。その間、一時間もない。そんな短時間でどうしてこんな無残な状態に変わり果てたか理解できない。
「嘘や……」
部屋には雪が降ったように散らばる綿と、よれよれの抜け殻と化した白いフェルトが散乱している。唯一完全な形で残っていたのは、ハナががっちり手縫いした大福風のハトだけで、まだ乾いたばかりだったボンド仕様のオーナメントは全滅だった。
ハナはよろよろと膝をついた。
その目の前に本物の羽根が、ふわり舞い降りてくる。ショックのあまり昇天し、天使のお迎えでもきたんやろうか、と無茶な現実逃避をしていると、静寂の中でかすかな「ポッポ」「ポ」という鳴き声がした。
「まさか」
サーっと血の気が引いた。
反射的に換気用の小窓を見上げる。するとその小さな隙間から押すな押すなで列を組んだ鳩たちが飛び立とうとしていた。ハナがダッシュすると、慌てた鳩はさらに慌てて小窓を抜け、一気に空へと逃げていく。
「なんでや、ハト? どうして」
――――――――――――どうして。
「ぐるっぽ」「ぐるるっぽ……」「んぽんぽ、ぽっぽー!」
そのアンビリーバボーな謎を解くため、この鳩語を翻訳してみよう。
「まるでなってないポッポ」
「あれだけ立派な巣材を運んだのに、あんな巣じゃお話にならないポッポ……」
「もう猶予はないポッポ、このまま手をこまねいてはいられないポッポよ!!」
このところ鳩たちは日夜、討議を繰り返していた。
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