いつでもとなり

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 徹夜で仕上げたハナのオーナメントは鳩たちに大不評だった。  このままでは埒があかないと、窓の向こうから必死に警告するも、ハナは完全にスル―。関係ない相方のヒロがのこのこと昼近くに起きてきて、能天気に「よう、達者か!」と手を振ってくる。アホかと。  そんな折、奇跡が起きた。  さすがクリスマス、サンタは鳩の願いをも叶える。まさに禁断の扉が開いたのだ。換気用の小さな窓がオープンになりハナが外出したのだ。この好機に鳩たちは色めき立った。  ――――――――――――時は来たり!  ――――――――――――いざ出陣なり!! 「お手伝いするでポッポ」 「最高の巣にしてあげるでポッポ」  それは鳩たちの思いやりに満ちた贈り物だった。  ポー!!という号令がかかり、小窓から近所の鳩が一斉にハナの部屋に集結する。今こそ鳩の本気をみせる時である。  鳩たちは出来上がったオーナメントを「使えないポッポ」と言いながら、自分たちの分身を模したものとも知らず、嘴や鋭い足の爪で押さえつけては中をえぐりだした。  鳩が努力すればするほど綿はとびちり、フェルトはちぎれる。急げや急げやの狂喜乱舞。室内は騒ぐ鳩と散乱する中身とでカオスだった。  そしてようやく全てのオーナメントをばらんばらんにした頃、ジャストタイミングでハナが帰宅した。できればフワフワに戻した巣材を丸くまとめておきたかったが、そこまでの余裕はなかった。だが、この短時間で見事にやりきったという充実感が、鳩たちに高揚を与えていた。 「ッポオオォォー!!」  雄叫びをあげ、空で旋回する鳩。しかしその高揚に反比例して、ハナは立ち直れないほどに意気消沈していた。
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