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「それができたのよ!
今、沙奈ちゃんの支度が終わるのを待ってるんだけど、その間に店がどこにあるのか調べなきゃならないのにカスリもしないの」
ちなみにマリアはもはや動揺を隠せない段階に来ており、トイレの個室に引きこもって泣きべそをかいている。マリアの検索能力と人脈を持ってしても亀という異分野ジャンルはヒットしなかった。沙奈ちゃんは仕事の申し送りをして着替えたらやってくる。残された時間はあとわずかである。
「沙奈ちゃん、亀に会いたい言うとるのん?」
「そうなの、亀カフェに行きたいっていうのよ!」
「行ったらええやん。オーナー、ええ人やったよ。亀愛ものすごかったけど」
「そうなんだ、さすがオーナーね。きっと亀好きが高じてお店を……って、え?どういうこと? ハナちゃん亀のいるお店知ってるの?」
マリアの声がワンオクターブ上がった。
「うん、僕が行ったお店が沙奈ちゃんが思うてる所で合ってるかはわからんけど、ごく最近、行ったばっかりや。『亀カフェ・一花』言うねん。ちょっと待っててな」
ハナは床に放り出したカバンに手をつっこみ、名刺ケースを取り出した。
くだんの亀カフェのオーナーは、帰りがけに店のカードをくれたのだ。おそらく行くことはないだろうと確信していたが、まさかここで役に立つとは思わなかった。
カードには当然、地図も電話番号も載っている。その写真をピッと送るとマリアは感激の声を上げた。
「うわ、ほんとにある。しかも結構、近くじゃない!」
ご都合主義ではない。(断言)
その地区自体がそもそも芸能人も多く訪れるコジャレた店で賑わっている場所で、それに付随して変わった店やカフェも乱立しているのである。
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