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改めて見回すと、その生活感のあちこちにヒロと一緒に暮らしている痕跡がある。二人分の食器や、ヒロの服、お互いのタオル。思えばすでにハナはずっと憧れていた暮らしの中にいるのだ。
「そうやったなあ……」
ハナは部屋のあちこちに混在する二人の持ち物を眺めながら、思わず呟いていた。
ヒロが好きで、好きすぎて一緒に東京に出て来て。
両想いになるなんて夢みたいやと思ってたのにそうなって。
そんで今日は恋人としてクリスマスを迎える―――――――――
「幸せやんな、僕」
きっとどんなクリスマスツリーだって、ハナが用意したというだけでヒロは喜んでくれる。さっきマリアにハナが言った『大丈夫』という言葉は、いつもヒロがハナにかけてくれる言葉なのだ。
ヒロの『大丈夫』に根拠はない。
だが、言い続けてくれたからこそ今がある。ハナはヒロの声を思い出し、改めてヒロが好きであることを実感した。
感傷に浸るハナの思考を遮るように玄関のインターホンが鳴った。モニターで確認するとマンションの管理人が荷物を抱えている。
「お届けものです」
受け取ると、伝票にはみ出すような大きな文字で鋼一徹と記名がある。クリスマスカラーの包装紙を取り去って箱を開けると、ハナは思わず感嘆の声を漏らした。
「うわ、すご……サブレやぁ」
一抱えもある箱の中にはぎっしり鳩のサブレが詰っていた。
まるで鳩がおしくらまんじゅうしているようにぎゅうぎゅうだ。全部でざっと五十はあるだろうか。
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