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なぜにサブレかと言えば、おそらくかつて映画の撮影時に大量に差し入れがあったことが印象深いのだろう。
とはいえ、そもそも鳩のサブレをこよなく愛しているのは、差し入れたヒロと、それをクランクアップまで毎日欠かさず食べていた鋼である。
同梱されていた封筒には、猫のクリスマスツリーの下でご満悦な表情で寝そべるたまこの写真。そのたまこを愛でる自撮り写真。
そして『メリークリスマス。また『ねこたん』で一緒に仕事しよう。ツリーありがとうな!』というメッセージカードが入っていた。
「鋼さん……お礼なんてええのに。でもこれ、むっちゃヒロ喜ぶわ」
照れる鋼の顔が目に浮んで、気持ちまでほっこりする。
それにしても沢山……とサブレを手に取ると、その姿とサイズ感に突如ひらめきが降りてきた。目の前のツリーとサブレを交互に見る。
「そうや、これでええやん」
ハナは猛然と立ち上がった。
個包装のサブレの裏側に紐をセロテープで固定し、樅の木にぶら下げればオーナメントの代用になる。あとは元々ツリーに付属していた飾りを足し、赤と緑の電飾で輝けば、それなりに見栄えがするだろう。
ハナは壁の鳩時計を見上げた。
残り時間は少ない。しかし迷いはなかった。絶対に間に合わせるという意気込みで、ハナはさっそくサブレの束を手に取った。
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