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さてさて。
ハナが奮闘している頃、相方であるヒロはお目当ての店に辿りついたところだった。
が、足を踏み入れた途端、異様な雰囲気に立ち止まった。小柄な男が大声で難癖をつけ、店の中の空気がピリピリしている。店長とおぼしき男性は気の毒なほど委縮していた。
「申し訳ございません。お品物に不備がございましたでしょうか」
「そういう事やあらへん。使わんことになったんや。だから返す言うてるんや」
「失礼ですが、お客様都合での返品はご遠慮願っております」
「なんでや、買うた店は違うてるけど姉妹店やろ。間違いなくここのブランドの品物やで。使うてもおらんのに返品できんとはどういうことや!」
「ではレシートを拝見させて頂いてよろしいでしょうか。レシートがございませんと、返品の受け付けはできかねることになっております」
「ガタガタ言うなや! 客に手間取らせんと俺の買うた店に電話してみろや。今日の午前中に行ったばかりやで。絶対に覚えとるはずや!」
あれ? 騒いどるのってペン太やないか。
聞き覚えのある声、口の悪さ、ペン太に間違いない。ヒロはノコノコと歩み寄った。
「何しとるーん?」
ペン太はいきなり現れたヒロに目を剥いた。
「お前こそなんでこんなところにおるねん!」
「買い物や。それより騒ぎはアカン。店の人、困っとるやろ」
長身だから仕方ないが、ヒロは小柄なペン太を常に見下ろす形になる。いつも小馬鹿にしているヒロに諭されて我慢ならなかったのか、ペン太はまなじりを吊り上げて反論した。
「うっさいわこのボケ! そもそも全部お前のせいや!!」
「ほへ?」
一方的な言い草にヒロはきょとんとする。その間抜け面がますます気に障ったのか、ペン太の怒りの矛先は完全にヒロに向かった。
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