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ペン太の歩き方にはくせがある。肩をいからせ、ガニ股でペタペタ歩くから後ろからでも目立つのだ。
ヒロはたちまち追いついて、ペン太の腕を掴まえた。
「ペン太! ギンちゃんに何て言ったんや!」
「お前しつこいわ」
「ええから答えてえや。何て言ったん」
「せやから、しょうもないけどもう一度お前とやったるわ、って声かけてやったんや。あのどんくさいギンにこの俺から言うてやったんやぞ。これで何がアカンの……」
「いい加減にしいや!」
ヒロは辺りを憚らず、腹の底から怒鳴った。瞬く間に視線が集中し、いきがっていたペン太が逆に焦りだす。しかしヒロはお構いなしだった。
「お前、漫才のネタができひんからって勝手にピンの仕事入れて、ずっとギンちゃん放置してたんやろ。その間、ギンちゃんはどうしてたと思う。解散もはっきりせんから定職にもつけん。まず間違いなくバイトしながら食い詰めてお前から声がかかるのを待ってたはずや」
「だったら余計、俺の話にのったら良かったやん」
いじけたようにペン太が目線を落とす。しかしヒロはさらに強い口調で続けた。
「そうや、そのつもりでせっかく来たのにもう終わり言うた。
あの人のええギンちゃんに見切られたんやぞ。なんで謝らんかった。どうして素直に頼まへん」
「今さらギンに頭なんぞ下げられるか!」
「そのひねくれた言い方がお前の本心やないことぐらい、長年組んできたギンちゃんはわかっとるはずや。けど、それだって何を言うても良い事にはならへん。嫌な言われ方されたらどんなに辛抱強い人かて当たり前に嫌な気持ちになる。本気で戻りたいなら、いい加減にちゃんとせえ」
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