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「相方なんぞいらん。どうせギンと組んだかて俺のネタの良さを活かしきれん。せいせいしたわ!」
ペン太はヒロの手をふりほどき、そのまま立ち去ろうとした。しかしヒロはそれを許さなかった。
「二人の方が絶対にええて! ギンちゃん大事にせえよ」
「よく言うわ! お前のとこなんぞ相方の休業騒ぎからろくに舞台にも立てんやないか!」
ペン太は青ざめながらヒロを見上げた。言った瞬間、ヒロを怒らせたと確信した。
ハナのメンタルが理由でハナヒロの活動に制限があることは周知の事実である。しかし、その内部事情に口を突っ込むのは明らかに言い過ぎだ。
ヒロはペン太の胸倉をつかんだ。モデル仕事の為に筋トレをしているため、細身だが力は強い。そのままぐぐぐ、と持ち上げる。小柄なペン太の足は、地面から浮きそうになる。
「相方は宝や」
ヒロはためらいなく言い切った。
「相方がおるから踏ん張れるんや。まずは相方に笑ってもらうことやろ。そしたら自分も楽しゅうなって、芸もネタも息が合ってくる。二人の力合わせたら、笑いは何倍にもなるんや」
「……」
「お前のキツイ言い方もガラの悪さも、ギンちゃんの物言いがのんびりしとるからこそ嫌味にならんと楽しゅう見られるんや。ギンちゃんの事、あきらめるなや」
ヒロはペン太を降ろした。
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