いつでもとなり

100/176
前へ
/609ページ
次へ
 困ったヤツなのに、ペン太を放っておけないのはなぜだろう、と思う。  コンビが成立するというのは奇跡みたいなものだ。  出会うことも、掛け合いの呼吸がピタリとはまることも。だが、二人だからこそ良い時もあれば、すれ違うこともある。  人は気持ちで繋がるものだから、心が離れればその関係は脆い。それがわかるからこそ目の前の駄目になりそうな二人を見過ごすことができない。  自分たちにもコンビ解消の危機は何度かあった。ハナに至っては心底お笑いを辞めたい時もあったはずだ。  それでも手放せなかった。  ヒロにとってハナの存在が自分とともにあることが当たり前になりすぎていた。不安材料が山ほどあるのにヘタレな自分と一緒にいてくれることを選んでくれたハナには感謝しかない。    だからハナは宝物で、一生大事にする。    それがヒロの信念だ。だから他のコンビでも相方をおざなりにする態度は見過ごせないのである。 「今からもう一回、ギンちゃんとこに行きや。早いほうがええ」  ヒロはペン太の肩をポンと叩いた。しかしペン太はむっつりと黙り込んでしまった。いじけた小学生を相手にしているようでヒロも困る。 「……もうアカンのや」  ペン太は握り拳をぎゅっと固くした。 「俺、ギンがどこにおるかわからへん」
/609ページ

最初のコメントを投稿しよう!

410人が本棚に入れています
本棚に追加