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「うん間違いないと思うわ」
ヒロから事情を聞き、ハナはすぐに亀カフェ・一花の名刺を送った。
ハナもオーナーに声をかけていた図体の大きな店員の存在にはひっかかるものがあった。ただあまり他の芸人とコミュニケーションを取れずにいるハナは、大人しかったギンちゃんのイメージがおぼろげだったのだ。
しかし、改めて特徴をなぞらえてみれば確かにギンちゃんだ。きっとギンちゃんは誰にも気づかれることなくひっそりと働いていたくて、同業者のハナに見つかるまいと姿を隠そうとしていたのだろう。ほぼはみだしがちだったが。
謎がとけてスッキリしたハナだったが、まだ電話の向こうではヒロがやんやと揉めている。後ろからペン太とおぼしき声が恫喝したり懇願したりと忙しい。
「俺も一緒? なんでや一人で行けや男の子やろ! はあ? 恥ずかしい? そないなこと言うとる場合か! 普段の勢いはどうしたんや。う……ま、確かにハッパをかけたんは俺やけど、冷たい言われたかて」
「ヒロ、どないしたーん?」
ハナが問いかけると、ヒロは申し訳なさそうに返事をした。とはいえペン太への雑な口調と違い、ハニーへの声は限りなく甘い。
「ごめんなあハナ。話してる最中。ペン太がどうしても一緒に来てくれ言うねん」
「道わかりにくいし、ついてったってあげたら? ヒロはそこら辺、仕事で知っとるかもしれんけど、いきなりじゃ見つけくいと思うで」
「ええー? けど俺らの待ち合わせがあるやん! 俺もうハナに会いたい」
「ちょっとぐらい遅らせてもええよ。大丈夫、僕も部屋のお片づけ終わらへん」
ハナはちらりと時計を見た。一人工房で死力を尽くした結果、鳩ツリーは完成したが、それ以外は手つかずだ。
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