いつでもとなり

104/176
前へ
/609ページ
次へ
 今夜は夢にまで見たクリスマスである。  小汚いまま迎えたくはない。ぶっちゃけ乙女度の高いハナにしてみればいざという事を前にして、風呂にも入りたいし、掃除機もかけたいのだ。 「夕方からと思ったけど、イルミネーション見ながら買い物すんのもええやん。一時間後にしよ」  むしろここで時間稼ぎができるのは好都合だった。  ペン太のゴリ押しに手を焼いていたヒロは、ありがたくハナの提案を受け入れ、電話は切れた。  ……ぽぅ……    携帯を置き、ツリーを見上げる。ずっと鳩と向かい合っていた結果、もはや無意識でも溜息が鳩風になる。  大量のクッキーをぶらさげた鳩ツリーは、電飾のスイッチを入れるとピカピカ光った。もはやツリーというよりサブレ大売出しの気配がなくもないが、間にぶっこんだ家や星の形のオーナメントのおかげでどうにかクリスマス感を保っている。  ヒロ、喜んでくれるやろか……  不安と期待が入り混じる。ハナはこの完成品の出来栄えを報告したくなり、写真をマリアに送ろうとした。だが、大事なデートの真っ最中、少しでも邪魔をしてはいけないと思い留まる。マリアの真剣勝負の恋はここが正念場、今頃きっと沙奈ちゃんとお茶をしてるはずだ。  ……あれ。  お茶……亀のおるところ……  ヒロの行ったんも、亀…… 「もしかして鉢合わせしてしまう……?」  寝不足でいまいち頭の働きが鈍っていたハナだったが、ようやく自分の案内により、まさかの亀カフェコラボが実現したことに気が付いた。
/609ページ

最初のコメントを投稿しよう!

410人が本棚に入れています
本棚に追加