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大抵は女の子が好きになる対象なのだと言っただけで、ざざざあっと引き潮のような拒否反応だ。嘘でしょ?と猜疑心に満ちた眼差しで探られたり、へらへらと笑って誤魔化されたりしたあと、重い沈黙で終了になる。
それでも最近は世の流れで同性の愛に理解ある子も増えた。
しかしその対象が自分となると途端に、いやいや待て待て、と拒絶されるのが定番の流れである。
場数を踏むうちにそれでもいいと言ってくれた心優しき女の子も何人かいた。だが、彼女たちは揃いも揃ってマリアの強さに憧れる。キャラ分類するなら、頼れるお姉さまのポジションだ。結局、愛されたいマリアの願望が満たされることはないのである。
「大内さん、私ね」
「藍野さま、私、」
まさかの台詞が被った。恐縮する沙奈にマリアはどうぞ、と先を譲る。もし玉砕するにしても、一分でも長く沙奈ちゃんとこのひとときを共有したい。悲恋にまみれてきたマリアは、達観の面持である。
沙奈ちゃんは静かに切り出した。
「私、仕事、辞めるんです」
「えええっ!!」
「最後だから、藍野さまとご一緒したかったんです。一生の記念に」
マリアは金縛りにあったように動けなくなった。大抵のショックに耐える心づもりはできていたが、あまりに唐突だった。
沙奈ちゃんは、カップを包み込むようにして、視線を落としたまま話を続ける。
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