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その好きに繋がる『す』がつんざくような男泣きで掻き消された。
「アカーン!」
ペン太が顔を真っ赤にして、全力で怒鳴っている。
「もう、何なのよッ! この小粒!」
怒り心頭のマリアは思わず立ち上がった。
真横はまさに修羅場である。
ペン太が仁王立ちになり、ギンちゃんの腕を握って放さない。オーナーは嫌がるギンちゃんを店側に引っ張ろうと奮闘中である。
マリアはつかつかとこの団子状態の三人の前に立った。その気迫にヒロが思わず後じさりする。
「人が大事な話してるときに、さっきからごちゃごちゃ煩いのよ! ここはカフェの店内でしょ、お客がいるのよ。揉めるんなら外でやってよ!」
「うそやろ……藍野マリアや。え? どっきり?」
ペン太は突如現れた生マリア、本物のグラビアアイドルに虚を突かれた。
「違うわよ、完全にプライベートよ!!」
「なんでこんなとこおんねん! いっくら有名人かて派手すぎやろその頭」
ペン太は見たままを言ったにすぎないが、正直すぎた。
マリアは毅然とペン太を睨む。化粧のきつい今日は、アイラインもつけまつげもバッチリで目力も増している。美しいが恐ろしい。マリアは女王のように気高くペン太の前に出た。
「私よりあんたの方がよっぽど有名人よ。お酒ひっかけてスタジオに来るとか、所かまわずすぐ怒鳴るとか。楽屋の雰囲気まで悪くなるってもっぱらの評判よ」
マリアはバラエティー人脈も豊富である。しかもタレント、スタッフ双方にだ。思い当たるだけにペン太が顔色を変えた。
喧嘩っ早いペン太に血の気の荒いマリア。さらなる高次元のバトルを予感し、ヒロが額に手を当てる。最悪である。
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