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「なんやとコラぁ、売れてるからてエラそうに意見すんなや!」
「売れてるからじゃないわよ、正論だからよ! せ・い・ろ・ん!! わかる?!」
戦いの火蓋は切って落とされた。
吠えるペン太に迎え撃つマリア。無駄にオロオロするヒロ。固まる沙奈ちゃん。見守るオーナー。その足元に静かに寄り添う亀。
「こんなきっつい女初めてや。ああ怖ええ! 藍野マリアの本性見たりや」
「怖いのは当たってるからでしょ! そんな言い方しかできないから嫌われんのよ」
「余計なお世話や! なんなら俺を嫌ってるヤツ、目の前に連れてきいや!」
「そこにいるじゃない。そのでっかいの相方でしょ? 愛想尽かされて逃げられたのよね? 子供じゃあるまいし、騒げば我儘が通ると思ったら大間違いよ!」
ヒロが間に入ろうとするも、交わされる激しい火花にタイミングがつかめない。まるで大縄跳びで回転に入り込めないノロマのように、身を乗り出しては引くという仕草を繰り返す。
痛いところを突かれ、ペン太は掴みかからんばかりにマリアに噛み付いた。
「我儘やない、何も知らんくせにコンビの内輪のことに口はさむなや」
「あーら、世間では嫌がる相手を無理やり付き合わせるのを我儘っていうのよ。未練たらしく追っかけてないで自由にしてあげたら?」
「それはできひん」
頑ななペン太にマリアの怒りは燃え上がった。瞬間、沙奈ちゃんの存在が視界の端に掠めたが、勢いがついたものは止まらない。マリアもやけっぱちである。
「なんでよ。どうせあんた、ほとんどピンじゃない。いざいなくなると惜しいなんてこのデカいのに失礼よ。はっきりしたら? いくら相方だって、人の人生をちゅうぶらりんにする権利なんかないんだからね!」
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