410人が本棚に入れています
本棚に追加
ペン太は首をふるふると横に振った。
「俺もようやくわかった。お前が好きや。もう逃げへん」
はいぃいい??
声にならないツッコミが外野からダダ漏れる。
「いいんですか、俺で……」
こわごわと聞き返す。ペン太がこくりと頷くと、ギンちゃんは感激の面持ちになった。二人はお互いの気持ちを確かめるように見つめ合う。
「え、ちょっ、何よ、あんたたちってそうなの?」
「え? じゃこっちが原因やったん? 俺がわかったような事言ってたん、実は見当はずれやったってこと? めっちゃ恥ずかしいやん!」
狼狽するヒロとマリアにペン太は柄にもなく照れて赤面した。
「そういう事や。けどま、ヒロの言う事もそれはそれで当たってたで。こっちは隠しとったしな」
マリアは瞬きを忘れ、目の前の二人に釘づけになる。
そして自分がすべきだった告白を凹凸のお笑いコンビに先を越されたことを知る。しかも自分がいつまでも崩せない険しい壁をさっくり越えて。
ギンちゃんの大きなごつい手がペン太の肩をつかんだ。
「本当にいいんですか? いざとなったらやっぱり駄目とかなしですよ?」
「もう覚悟決めたわ。お前の粘り勝ちやな」
ペン太が泣き笑いの顔になった。これまでペン太がふりまいていたとげとげしていた空気が温かいものに変わっている。もはやチンピラ口調がツンデレ仕様に思えるほど愛は効果絶大だ。
「ありがとうございます、俺、嬉しいです、ペン太さんッ!」
ギンちゃんは感極まってペン太を抱きしめた。構図としては熊に仕留められる狸だが、まごう事なき愛の抱擁である。
「俺、信じられないです。夢とかじゃないですよね」
「頭悪すぎか。今、言うたばかりや。お前自信ないにもほどがあるで。今日も初めに会ったとき最後まで人の話聞かんと行ってまうし」
「だってすごく不機嫌そうだったから……ペン太さん、コンビの仕事するために嫌々迎えに来たんだなと思って。だったら苦しいままだし、もうこれで会うのは最後にしようって思ったんです」
「ほんま阿呆や。俺、ずっと一緒にやるつもりで、お揃いの蝶ネクタイまで用意してったのに」
「お揃い? うわ、もしかしてクリスマスプレゼントですか、ペン太さんが俺に?」
想いが通じて一気に話が弾む二人。きゃっきゃっと楽し気だが、これで万々歳ではない。呆気にとられていたヒロが我に返った。
最初のコメントを投稿しよう!