いつでもとなり

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「そうやったー!!」  すっかり二人の世界になった店内で、ヒロの雄叫びが響き渡った。ヒロは店の時計を見て頭を掻き毟った。 「俺、ネクタイまだ買うてない! 店に戻る時間もあらへん、てかもう完全に遅刻や、ハナに怒られる!」 「あー、なんかすまん。もう行ってええで。ほな」 「ヒロさん、お世話になりました。幸せになります」  照れた素振りのペン太は掌をヒラヒラさせ、ギンちゃんは丁寧に頭を下げた。ヒロはもう上の空でドアに向かっている。  恋人同士のクリスマス、シチュエーションまでこだわった大事なハナとの約束である。しかも一度時間を変更してもらって、これ以上の遅れはありえない。 「あああ、駅まで走って何分やろ、そっから電車で……きっつ、次の発車に間に合うやろか」 「待ってください、ヒロさん。俺、車出します。待ち合わせ場所まで送らせて下さい」  見かねたギンちゃんが名乗りを上げた。おっとりだが、割と実務能力はあるのである。だてに荒くれペン太のフォローを長年してきた訳ではない。  有り難い申し出にヒロがもろ手をあげて泣きついた。 「ほんまっ?! 助かる、そんならギリセーフかも」 「ギンは優しいなあ」 「だってペン太さんを連れてきて下さった恩人ですから」 別人のようにやに下がるペン太に凛々しく答えるギンちゃん。またしても二人の世界になりそうになり、ヒロはドアノブを掴んで叫んだ。 「早う行くで! あ、オーナー、お騒がせしました。ギンちゃん借ります。でもって藍野さん邪魔してすまん、告白ガンバ!」  必要な挨拶を三秒でまとめ、ヒロは鉄砲玉のように飛び出した。ペン太とギンちゃんもそれに続く。オーナーも亀とともに見送りに出た。   「……告白……?」  沙奈ちゃんがポカンと呟く。  あのボケ、余計なことまで……!  かくして店にはいよいよ追い詰められたマリアと沙奈ちゃんが取り残されたのである。  
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