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ひどく寒い。
待ち合わせ場所についてすぐ雪がちらついていた。
マフラーをモフモフに巻いてきたが、それでも底冷えがしてくる。ずっと待ちぼうけなのはハナぐらいである。他にも待ち合わせの人たちは沢山いたが、電車がくるたびに合流して去っていった。
遅いなあ……
また駅から人波が吐き出され、ハナは首を伸ばしてヒロを探した。
その一団の中でヒロと同じくらい上背のある青年がいて、脇目もふらず駆け寄ってくる。その必死なほどにまっしぐらな様子が羨ましくて、ハナの目は釘づけになった。
「遥さん、すみません! お待たせしました」
「遅―い、侑司。寒い」
「これから俺が全力であっためます!!」
待っていた男性が、ふはっと優しい顔で笑う。暗黙の了解として差し出される手。大事なものを守るようにしっかり繋いで、二人は雑踏に消えていく。
うっわぁ、ええな、ああいうの……
仲のいい後ろ姿を眺めているだけで、その甘い恋人オーラにきゅんとしてくる。ヒロと一緒にはいるけれど、あんな雰囲気で仲良く歩いたりしたことはない。外を歩くときは仕事がらみ、最近では主にハトの着ぐるみ姿で、近づけばかさばってぶつかる有様である。
人波が去ってもヒロは来ず、さすがに心細くなってきた時、ちょうど着信が入った。
今現在、佐崎とヒロとハナの着信音は仲良くハトダンスになっている。『ぐるぐるぐるぐるぐるっぽー♪』の陽気な曲は想像以上に大きく流れ、ハナは慌てて通話に切り替えた。
「あ、ヒロ! うん、うん、うん、あ、ほんま? 道混んでる? え? 車なん? もうちょっと? うん、わかった」
場所が悪いのか聞こえにくく、つい大きな声で返事をする。ハナは通話で必死なだけだったのだが、この声で周囲がざわついた。
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