いつでもとなり

119/176
前へ
/609ページ
次へ
 ひどく寒い。  待ち合わせ場所についてすぐ雪がちらついていた。  マフラーをモフモフに巻いてきたが、それでも底冷えがしてくる。ずっと待ちぼうけなのはハナぐらいである。他にも待ち合わせの人たちは沢山いたが、電車がくるたびに合流して去っていった。    遅いなあ……  また駅から人波が吐き出され、ハナは首を伸ばしてヒロを探した。  その一団の中でヒロと同じくらい上背のある青年がいて、脇目もふらず駆け寄ってくる。その必死なほどにまっしぐらな様子が羨ましくて、ハナの目は釘づけになった。 「遥さん、すみません! お待たせしました」 「遅―い、侑司。寒い」 「これから俺が全力であっためます!!」  待っていた男性が、ふはっと優しい顔で笑う。暗黙の了解として差し出される手。大事なものを守るようにしっかり繋いで、二人は雑踏に消えていく。  うっわぁ、ええな、ああいうの……  仲のいい後ろ姿を眺めているだけで、その甘い恋人オーラにきゅんとしてくる。ヒロと一緒にはいるけれど、あんな雰囲気で仲良く歩いたりしたことはない。外を歩くときは仕事がらみ、最近では主にハトの着ぐるみ姿で、近づけばかさばってぶつかる有様である。  人波が去ってもヒロは来ず、さすがに心細くなってきた時、ちょうど着信が入った。  今現在、佐崎とヒロとハナの着信音は仲良くハトダンスになっている。『ぐるぐるぐるぐるぐるっぽー♪』の陽気な曲は想像以上に大きく流れ、ハナは慌てて通話に切り替えた。 「あ、ヒロ! うん、うん、うん、あ、ほんま? 道混んでる? え? 車なん? もうちょっと? うん、わかった」  場所が悪いのか聞こえにくく、つい大きな声で返事をする。ハナは通話で必死なだけだったのだが、この声で周囲がざわついた。  
/609ページ

最初のコメントを投稿しよう!

410人が本棚に入れています
本棚に追加