いつものとなり

いつでもとなり

「藍野さまが初めてお店に来たとき、あんまり綺麗でびっくりしたんだ。芸能人ってやっぱり全然ちがうんだな、って。なのに藍野さまは気さくに話しかけてくれて、すごく嬉しかった」
「そんな」
「藍野さまはいつだって飛び抜けて綺麗だ。さすがプロだと思ってた」

やたらと話しかけたのは一目惚れだったからである。綺麗にしてたのは沙奈ちゃんに会えるからだ。しかし沙奈ちゃんの良心的解釈は続く。

「それだけじゃねくて店の子に気ぃ使ったり、合間にも仕事の連絡とってたり、難しい顔で考えこんでだり、すごく頑張って仕事してる。
　店に来てくれるたんび、藍野さまの努力がびしばし伝わってきて、すごいなって思ってた。
　手の届かねえ人ってわがってたはずなのに、いつの間にか藍野さまのこと気になってテレビや雑誌まで全部、探して見るようになってたんだ」

　ちなみに店の子に気を使っていたのは沙奈ちゃんの情報を得るためであり、合間に電話をしたのはハナとの恋バナ連絡、考え込んでいたのは沙奈ちゃんを見つめながら妄想に励んでいた為である。
　馬鹿正直に答えるには内容がほぼストーカーなのでマリアは押し黙った。そんな実情を知らず、沙奈ちゃんきっぱりと言った。