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ペン太が事態を察して脇から突っ込んだ。
「こうなったらしゃあない! しゃべれんなら歌でも歌ったらええ!」
「ペン太さん、それこそ強引では」
「ライブやライブ! クリスマスやぞ、何やっても受けるわ」
ペン太にしてみれば、永年路上ライブをやってきた身の上、わらわらと人が集まっていると聞くだけで血が沸き立ってくる。しかしそれはペン太だからこそであって、大勢に囲まれるとなれば常人でも怯む。
「歌? そうや……よぉし!」
騒ぐペン太となだめるギンちゃんを放置して、ヒロはカッと目を見開いた。
「ハナ聞こえるか。俺の言う事、よーく聞いてや。ええか、俺にはわかる。その人らは鳩ダンスを期待してるんや。テレビでよく見るぐるっぽーを生で聞きたいだけなんや。ハナやない、鳩や!」
「僕……じゃない?」
「そうや。今こそ鳩になる時や。変身や」
「でっ、でも着ぐるみあらへん」
「そこは演技や!! ガワなんぞなくてもどうにでもなる!」
ヒロは叫んだ。
ああ、この無茶ブリ、宮本センセに寄ってきたな、と戦慄しつつ。
しかし、好むと好まざるにかかわらず巨匠と絡んできた結果、根拠がなくとも自信満々に物を言い切る術は身についている。
ヒロは宮本マジックを彷彿とさせる熱い口調で語った。
「ハナ、心で鳩になりきるんや。ハナならできる。そこは撮影現場、ミュージックビデオの続きや。ヒロ鳩を待つハナ鳩のダンスや!!」
「撮影の……」
「そうや。羽ばたけハナ、渾身の踊りで俺を呼びよせるんや!」
ヒロは言い切った。胸中、祈るような気持ちで。
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