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連日ハトとなり、仕事をしてきたハナである。
これまでの蓄積により、もはやハトと聞けば反射的に『ポ―』と呟くほどハト化が進行している。ヒロの暗示は、役作りを仕上げてきた役者の前でガチンコを慣らしたも同然だった。
ハーナーちゃん、ハーナーちゃん!!の盛大なコールの中、ハナは植え込みから出た。
単なる路上だが、ハナには見えないスポットライトが見えている。
沸き上がる歓声。その声を一身に浴びてハナはいきなり拳を天に突き出した。
「ぐるっぽー!」
おおおおー! テレビでおなじみの第一声が響き渡り、生のぐるっぽーに人々がどよめく。ハナのテンションはいきなり最高潮だった。さすが巨匠仕込み、限界まで振り切っている。
ハナはさらに全開の笑顔でバチッと目線を決めてきた。一挙にバス停がライブ会場に変貌を遂げる。
「ヘイ!! セイ!! ぐるっぽー!!」
どよどよどよ。このどよめきは、歓喜より困惑が勝っている。
え? 俺達も? そんな戸惑い溢れる表情に、ハナは幼児番組の呼びかけ同様の大きな身振りで手をかざした。
「セイ!! ぐるっぽー!!」
You達、どうした?ホワイ? 両手を疑問形で広げ、ハナの煽りはさらに激しい。するとさすが義理堅い日本人、リアクションを求められて人々は律儀に反応する。
「ぽ……」「ぐるっぽ……?」「ぐるっぽー……?」
「イエーイ! ぐるっぽー!! セイ!!」
「ぐるっぽー」
「イエス! ワンモア!! ぐるっぽー!!」
「ぐるっぽー!」
ハト化したハナに一切のためらいはない。のちに正気に返ったハナは、ヤバい白昼夢を見た……と語るのだが、それはさておく。
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