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その声に我に返ると、追いついたペン太とギンちゃんが息を切らせている。駐車してから全力疾走してきたのだ。未だ感動の最中にいるヒロは、涙を抑えながら言った。
「でもどうやろ、こうなったら俺も共にこのダンスを体感すべきやないのかな。一緒にハナとぽっぽーしたほうが……」
「アホかいな、こんな激しい踊りいつまでも続くわけないやろ、早う逃げ!」
「けど……」
そうは言っても、今や人々の視線は一身にハナに注がれている。そのハナを横からさらって逃げるのは至難の業だ。だがヒロが参入すれば、この騒ぎはさらなる熱狂に巻き込まれるだろう。一応ヒロもスーパーイケメンとしてきゃーきゃー言われる素地はある。
「まあ、俺に任せとき」
ペン太はにやりと笑った。
「ギン、ええか。『無礼でござる』やるで。喫茶店バージョンのやつ、できるか」
「もちろんです」
何の戸惑いもなくギンちゃんは頷いた。しばらく途切れていてもさすがはコンビ、ツーと言えばカーである。ギンちゃんはペン太のやろうとしていることを予想していたらしい。
ペン太はいそいそと新しい蝶ネクタイを装着した。さりげなく同じものをギンちゃんにも渡す。久しぶりのペンちゃんギンちゃんの復活である。
「ヒロ、今回は世話になったな。俺らがこの路上ライブ引き継ぐわ。目線、こっちに惹きつけるからその隙に逃げろ。ええな」
「でも、こんな状態やぞ?」
憑りつかれたように連呼されるぐるっぽー。とにかくハナと人々との一体感がすごい。しかし、ペン太は自信満々だった。
「まかしとけ。こちとらどんだけ路上やってきたと思うねん」
言うなり、ペン太はヒロの背中を押した。
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