いつでもとなり

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 植え込みの後ろからこっそりと近づいて、ヒロは、息も絶え絶えのハナの手を取った。 「ハナ、行こ」 「ぽぅ……?」  突如現れた人ヒロに、ハナはまだ夢の中のように呟いた。その返事が人類から逸脱していても無理はない、あれほど全力でハトだったのだ。  ヒロはハナを抱えるようにして、そそくさとその場を離れた。  ヒロに気付いた周辺の人が歓声を上げそうになる。ヒロは口元に人差し指を当て、美しく微笑んだ。目の行き届いているペン太が素早くフォローし、すかさずその観客を指さす。 「そこの者!! 今は戦国の世ではないのか?」 「え、ええっと、令和」 「そんなものは聞き覚えがない! 無礼でござる!!」  いきなりの指名にもたついている隙に、ヒロはハナの手首を掴み、踏切につながる裏道に向けて走り出していた。
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