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「商店街、バレるやろか」
「あそこはいつも行ってて僕らのこと知っとるし、駅のまわりと違って自分の買いものでいっぱいいっぱいや」
「せやな。もう遅いし人出のピークも過ぎてる。行こ!」
こそこそと話しながら、ふたりは銀座通りに入った。甘いものが好きなハナに早くケーキを買ってやりたくて、ヒロはつい足早になる。
「ヒロ、見て。どのお店もきれいや」
ヒロに手を引かれながら、赤や緑に点滅する装飾に目を奪われたハナは言った。
ちょうど夕方から夜に差しかかった時刻だった。
導くようにあちこちのネオンに光が灯る。ハナは子供のように無邪気に見上げて、そのきらきらを目で追いかける。
ヒロがぎゅっと指に力をこめた。
「ハナは何してても可愛ええなあ」
「えっ?」
「あー……可愛すぎて思ってることまんま口から出てもうた」
ハナは答えられず、静かに赤面する。幸せすぎて死ぬことはあるだろうか、と訳のわからない不安に陥りながら、ヒロの手をそっと握り返す。
このやりとり、後日マリアに報告する際に嬉し過ぎて三回ほど繰り返し、まさに壊れかけたRadio状態に等しいときめきであった。
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