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「アカン、俺たちのトリ肉が」
気配を察したヒロが青ざめてダッシュする。しかし遠目にも店頭販売のショーケースは空っぽである。
「あのッ、肉!!」
辿りつく前に声を上げたヒロに、早くも撤収を始めた熊は静かに首を横に振った。
「おにく……」
伸ばした手が空を掴む。店主は伺うように首を傾げた。
「生なら……」
「生は無理……」
ハナが力なく首を振る。
どう考えても今から家に帰ってローストチキンを焼く気力は残っていない。ここでメインのトリ肉が手に入らないという悲劇に見舞われたのは、同族を守ろうというハトの呪いだろうか。
「ええよもう、大福だけでお腹いっぱいや」
確かに大福だけはうなるほど大量にある。ヒロは恐る恐る聞きかえした。
「そ、そか……? じゃ、家帰ってから出前でもとろか」
「うん」
きっと、出前は来ない~、とお馴染みのクリスマスソングにのせて、更なる悪い予感がした。なぜか悲劇は連鎖するものだからである。
かくして二人はとぼとぼと家路についた。
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