いつでもとなり

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*****  雪はさらに本降りになっていた。  足元のアスファルトは白く染まり、溶けた水分が靴に染み込む。吐く息まで凍りそうだった。こうなるとロマンティックを通り過ぎて、ただ寒いだけだ。    なんでいつも普通に行かんのやろうなあ……    ハナは悲しくなってため息をついた。もとはといえば自分がクリスマスツリーに固執したのが原因である。  何もしゃかりきになってハトをぶら下げなくても、普通にヒロと付属のオーナメントを飾りつけすれば良かったのだ。ヒロは再三にわたり一緒にやろうと言っていたのである。ヒロだって二人のクリスマスのためにツリーを飾りたかったに違いない。  そうすれば余裕でツリーも仕上がり、今日のデートも確実な待ち合わせができ、あんな人だかりに囲まれることもなく「待った?」「全然!」という常套句のやりとりをしてゆったりと買い物できたはずなのだ。  そして逃げ回ったロスタイムがなければ肉も手に入り、ケーキも別の店で買い直しをする余裕があったわけで……  今更のたらればだが意地をはった自分が申し訳なくて、ハナは黙っていられなかった。ヒロの腕をひっぱりその場で立ち止まる。目が合った瞬間、言葉が零れた。 「今日は駄目やね。せっかくのクリスマスやのに駄目にしたの僕や。ごめん」 「何で?」 ヒロは、驚いたように聞き返し、俯いたハナにきっぱりと言った。 「今日はええ日や」 「何で?」 今度はハナが尋ねる番だった。見上げると、ヒロは真顔で頷いた。
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