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「ハトちゃん!」「ハト!」「これもハト!」「こっちも!」
感激のあまり脳の言語野が崩壊したらしく、ヒロは幼児のようにいちいち指さしては振り返り、ハトを連呼した。その目はブリリアンカットのダイヤのように燦然と輝いている。
「えと……嬉しい?」
ハナはおずおずと尋ねた。あまりのリアクションの激しさにたじろいでしまう。しかし喜々としてハトの周りをぐるぐる回り始めたヒロの姿に疑う余地はなかった。
「嬉しいもなんも!!」
断言するヒロは樅の木を抱きしめんばかりだった。
「夢のようや。鳩のツリーやで? 世界でたった一つしかあらへん。もうこれは永久保存版やろ。うちは今日から毎日クリスマスでええ、ずっとこれ飾っておこうや!」
「腐るで」
ハナは冷静に突っ込んだ。乙女心と現実主義が同居しているのがハナである。確かにこんなものを作る物好きはそうはいない。そして付け加えるならこの微妙なセンスの代物をこれほど喜ぶ者もそうはいない。
しかし、ヒロの感性にはジャストミートである。きらきらとハトがいっぱい。このポイントをバッチリ押さえたハナは、ヒロを知り尽くしていると言えよう。
「ハナ、俺のためにこれ作ってくれたんやろ。ずっと頑張ってたもんな。それにしても発想が天才的や。見て可愛い、食べて美味しい。それも俺の大好物のサブレをこんなに惜しみなく……まさに最高の逸品や」
猫ツリーをまんまパクリましたとも、そのサブレは鋼からのプレゼントだとも言えないハナだった。やむなく照れ笑いでお茶を濁す。
「ヒロがこないに喜んでくれて僕もうれしい」
「そら嬉しいに決ま……ああああああああ!!」
会話の途中ながら、またしてもヒロは絶叫した。喜びを隠せない男なのである。素直とも単細胞とも言う。
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