410人が本棚に入れています
本棚に追加
緊張しているせいか、ヒロの声も熱い吐息も、全てが冴えわたって鮮やかに響く。
……ダッダッダッダッダッ……
「……ん?」
違和感にハナは眉を寄せた。その鋭敏な感覚が微細な揺れを感知し、遠くから迫りくる地鳴りのような足音を捉えたのだ。
これは……あれや、バッファローの群れの来襲……的な?
「ちょっと待ってヒロ!」
「怖がることあらへん…」
まだ陶酔中のヒロがぐいぐい迫ってくる。しかしただ事でない地鳴りが床からも伝わってきた。
ズダダダダダダ、ドシドシドシ……
容赦ない揺れにさすがのヒロも動きを止めた。
「何やこれ、まるでサバンナにおるようや」
「牛追い祭りやろか」
寸止め状態の二人は訝しげに顔を見合わせた。するといきなり足音が停止し、玄関のドアがガチャガチャと回された。
「わあっ、サンタさん?!」
「サンタやったらもうちょっとお忍びでくるやろ」
この状況で二歳児並みの反応をしたヒロにハナがすかさず突っ込む。大好きやけど、こういうとこ僕がついてないと心配や…ハナは早くも世話女房の心境である。
「むしろこのパターンはアレやないかな」
「パターン? そんなんある?」
「間が悪いときたら佐崎さんやろ。てか、うちのカギ持っとるの、僕ら以外では佐崎さんしかおらん」
まさにハナの指摘通り、開いたドアから転がり込んできたのは佐崎だった。佐崎とくれば仕事絡みである。なぜいま……。二人は心底げんなりする。
最初のコメントを投稿しよう!