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だが今日は佐崎だけではなかった。
その後ろからオイリー先輩が到着し、同時に二人で玄関から入ろうとしてぎゅうぎゅうにぶつかり合っているのだ。さらにその背後からは赤ん坊の泣き声がBGMとして流れ、その赤ん坊を両脇に抱えたパワフルな女性も見え隠れしていた。さすがに面子が謎で、二人はまたしても目線を交わし合う。
「ヒロ! ハナっ!!、き、きき、きまった!!」
こけつまびろつ、そのままつんのめって二人の前で座り込んだ佐崎は叫んだ。興奮極まり、のぼせたような顔をしている。
「佐崎さん落ち着いて。酔っぱらってる?」
「靴のままやで佐崎さん。一応脱ごうか」
佐崎のテンションとは逆にハナもヒロも沈んだ声だった。ここぞのチューを邪魔された哀しみは大きい。そして二人きりのクリスマスがこのまま終了する予感でいっぱいである。
「いやいやいや、確かに家呑みはしてたけど、酔いなんか一瞬で醒めたから。二人とも聞いて驚け、あのね!」
しかし、佐崎はそんな二人のがっかりな空気など気にも留めず、全力で前のめりだった。なぜならば超・メガトン級の朗報があったからである。
「紅白! 出場!! さっき連絡きたんだ、おめでとうっつ!!」
佐崎はバンザイのポーズでこの快挙を報告した。しかし二人はきょとんとするばかりである。
「「……なんで?」」
「ちょっ! なにそのうっすいリアクションは! 紅白だよ、天下の紅白。これでプロフィールに紅白歌合戦出場歌手って書けるんだよ! もうさ、この連絡受けてから事務所は祭りだよ!」
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