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しかし佐崎の舞い上がりぶりも無理はない。
紅白といえばその権威と視聴率で絶大な影響力を誇るお化け番組である。例年、国民の半数近くが視聴し、エピソードも話題になり、スポーツ新聞に至っては連日見出しを飾る。あまつさえ昨今は世界に配信もされている。
これほどの晴れ舞台はそうそうあるものではない。出演後の紅白効果まで含めれば、宝くじで大アタリを引いたようなものだ。
これでハナヒロ人気がドドーンのババーンになって、さらにハトダンスがメガヒットして、事務所から大入り袋が出て、昇給して昇格して、ぽんちゃんに褒められて、家のローンも繰り上げ返済できて……
佐崎の夢はとめどもなく広がっていく。
オイリーから直で連絡がきた時、佐崎宅はクリスマスパーティーの真っ最中だった。しかし呼び出しの内容を聞くや否や、直立不動で固まった。
マネージャーにとっても担当が紅白に出場することは勲章である。この名誉がまったく肝心の二人に伝わっていないが、それはいつものことだ。後に振り返った時、この仕事は必ず大きな宝になる。だからこそ二人がピンときていないぶん、佐崎が張り切るのだ。
「さあ、打ち合わせに行くよ! うちも年末まででスケジュールを空けてあるのは今日しかないからね」
「ええっ、今から?」
「そうだよ、一通りリハーサルするところまでやるらしいから、着ぐるみも用意して。ほらほら!」
「クリスマス……」
「いいじゃない、お正月と一緒にやれば! なんならカレンダー、そのままにしとけば全然大丈夫! エブリディ・クリスマス! 楽しそうだ!」
欲の前に適当さが増す佐崎である。
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