410人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
さて、この何気なくも微笑ましいやり取り、実は重大なる意味を持つ。
誰あろう、ハトにである。
この聖夜を誰よりも待ち望んでいたのはドジっ子ハト、そのポッポ―であった。
樅の木がハナ宅に設置されてはや数週間。樅を巣材と勘違いしたドジっ子ハトは、ハナがタマゴを産む日は近いと仲間に宣言し、それを真に受けた鳩たちはマンションの周りを強化パトロールしていた。
しかし一向にタマゴの気配はない。
根気よく見守っていたハトたちだったが、合体という決定打を押さえていないため、産卵説自体が揺らいでくる。ドジっ子ハトは周囲の疑心暗鬼の気配を感じながら肩身の狭い思いをしていた。
そしてここぞという今日、衝撃の展開を迎えた。巣材になるはずの樅の木は飾られ、準備した綿は一掃。さらに部屋にこもって産卵すると予想されたハナは外出してしまったのである。
……これって、やっぱ違うっぽ……?
ドジっ子ハトの宣言はいよいよ信憑性を失い、煽動した分だけ仲間のハトたちから責められようとしていた。ドジっ子ハトは必死で言い訳する。
待つのだぽっぽ!
いくらハトの身に憧れても、巣作りも覚束ない二人、きっと産卵はどこかで誰かの助けを借りるつもりぽっぽ!
しかし仲間の反応は微妙に冷えたものだった。明らかに半信半疑といった雰囲気である。それゆえにドジっ子ハトはジリジリとした焦燥感を抱えながら二人を帰りを待った。
最初のコメントを投稿しよう!